暖かな春の気配を感じるこの頃になると「新しい何かが自分を待っている」と歌にある様に、ウキウキと前にあるものを探したい気持ちになりますね。

私がお料理に興味を持ったのは、小学生の２年の時でした。一緒に住んでいた父親の妹である伯母が、自由が丘にあった当時はトレンディーなお料理教室に通っていて、幼稚園のお弁当を毎日作ってくれましたし、グラタンやシチューも食卓にあがっていました。

お誕生日のケーキを作る時に生クリームやいちごを弟といっしょにつまみ食いしてその甘くて柔らかい味が美味しかった事や、グラタンのホワイトソースがゆれているのをオーブンの外から早く出来ないかなと待っていた思い出は、いつでも心なごむ豊かなものです。

もう４０年以上も前の事ですので当時は珍しい家だったかもしれません。でも時々シュークリームを失敗してそっと犬にあげたり，膨らまなかったシュー皮にクリームをのせて食べたのも覚えています。家族が集まった庭に面した廊下の暖かい陽だまりを思う時に、私のお料理の原点はあそこにあったと言えますね。

その伯母が結婚をして花嫁道具と共にいなくなって寂しく、伯母がやっていた様に、家族に気付かれない様、早朝にお風呂場から椅子を持ってきて台所に立って鰹節をかいて、大根を切って味噌汁を作り家族が起きてくるころ出来上がって皆がそれを食べていました。

母は私の洋服と着物を振袖以外ほとんど作ってくれて、幼稚園のお遊戯会や卒園式に、小学校の入学式にと、上から下まで色のお揃いのかわいいお洋服を着せてもらっていました、シルクやカシミヤのドレスやコート、ウエディングドレスやマタニティもほとんどすべて手作りの中に生きていた気がします。作り出す事は生きている事の一部であるかの様に育ったのかもしれません。

もちろん好みが合わなくてケンカになったりした事もあったけれど、愛情を沢山もらったから、私も誰かにお料理の作り方と共に「このレシピを使ってあなたも幸せになってね。」って思えるのかもしれません。

生徒さんの中には、お友達から「どうせお料理教室に通ったって家でやらないでしょ。」って言われる人も多いそうです。私の生徒さんはお料理上手になっていく人が多いですので、「そんな事ないわよ。ほとんど家で作るし、家族から喜ばれるのよ。」と答えると、「それは珍しいお教室ね」といわれるそうです。実際色々な教室に通った経験のある人ほど、ココのお教室の良さがわかって頂けているみたいです。

さて、最初に新しい何にトライしようかと書きましたが、秋を目標にお教室を東京の真ん中に移転する計画をしています。私のレシピとレクチャーのポイントは何よりお料理のコツとテクニックを織り込みながら作りあげていくところです。だからその理解して頂く深さが違うと思いますし、ポイント一つ一つの点はほかのレシピに応用がききます。

食の偽装が問題になっている今、お料理を作ることの沢山の意味をお伝えしたく心まで動かせる「お料理の力」を私なりに表現したいと思っています。１６年前にご近所の人、６人で始めたお教室ですが、集大成のチャンスを頂いて頑張ってみたいと思っています。母親であり妻であり、お教室の先生としてのハードスケジュールをこなしながら、今ならしっかり料理を勉強してきましたと言えます。

基本がしっかり出来ているので今取り組んでいるクイックメニューも味を落とさなくて出来上がるのだと思います。まだまだ自分も含めて忙しい人の為の「食材を無駄にしない三日間のメニュー構成」や、「ただいますぐご飯」も多くの方に活用して頂ける形で取り組んでいきたいと思っていまので、皆さんのご理解、ご協力が頂けたらうれしいです。

先日、ある取材でお子さんと一緒に楽しむおひなまつりのお料理をつくりました。お鍋で簡単においしいプリンが出来て、なかなかかわいく仕上がりました。写真でご紹介しておきます。

お花便りと共に本番の春もそこまで、爽やかに春を迎えましょうね。